「先生、寝ました?」
「……寝てる」
「それは嘘ですね」
橘の声が、すぐ近くで響く。
「もう……何……」
寝たふりを続けようと思ったけど、気配があまりにも近くて目を開けてしまう。すると――
「わっ!?」
目の前に、橘の顔があった。
「近っ……!」
「先生が全然寝ないから」
「だ、だからってこんな距離……っ」
「近くにいたら、先生も意識して寝れなくなるかなって」
「~~っ!!」
橘の手が、私の髪をそっと撫でる。
「先生、ほんとに可愛いですね」
「ば、バカ……!」
顔が熱くなるのを感じて、思わず布団を引っ張るけど、橘がそれを止める。
「ねえ先生、取材の続き、しましょうか?」
「……は?」
「無事でいられないって言ってましたよね?」
囁くように言われて、心臓が跳ねる。
「……っ」
もう逃げられない。



