お風呂から上がった私は、全身の熱が引かないまま部屋へ戻った。
(……あいつ、ほんっっっっっと……!!!)
私がこんなに意識してるのを、きっと分かってやってる。なんなら、完全に楽しんでる。くそ……!
「先生、そろそろ寝ます?」
「……勝手にして」
「それじゃ、お言葉に甘えて……」
橘は、浴衣の帯をゆるめながら布団に入る。
――そう、布団。
一組。
ひとつ。
(まってまってまって)
「あ、これ、やっぱり一緒に寝る流れですよね?」
「な ん で そ う な る」
「だって、プランがそうなってるんで」
「旅館のプランを全面的に信用するな!!!!!」
「じゃあ先生、どこで寝るんですか?」
「……」
まじでどうしよう。追加の布団なんてないし、床で寝るのはさすがに寒い。
「遠慮しないで、先生もこっち来たらどうです?」
橘が、ぽんぽんと自分の隣を叩く。
(ああああああああ!!!!!!)
「……しかたない、背中合わせだからね!!」
「はいはい、先生の好きなように」
余裕たっぷりの橘を横目に、私は思いっきり背中を向けて布団に潜り込んだ。
(……寝るだけ、寝るだけだから……)
でも、心臓がうるさい。
――こんなんで、ほんとに寝れるの……??



