バスに揺られること数時間。取材先の温泉旅館に到着した。

「おぉ……結構いい旅館じゃん」

旅館の入り口で荷物を下ろしていると、他の作家さんたちもテンションが上がっていた。

「椎名先生の部屋は――」

受付の人が鍵を渡してくる。橘がそれを受け取って、中を確認すると――

「……え?」

「どうしました?」

橘が私の隣に立って、予約の紙を覗き込む。そこには……

《椎名先生・橘編集 二名一室》

「…………」

「…………」

「……え?」

「え?」

ガチのダブルブッキング。