橘の指先が、ゆっくりと私の頬をなぞる。 「……先生、緊張してます?」 「えっ、そ、そんなこと……」 「ふふ、顔真っ赤ですよ?」 そう言いながら、橘は少しずつ距離を詰めてくる。 心臓がうるさい。 ダメだ、これはあくまで取材のはずなのに―― 「椎名先生」 名前を呼ばれた瞬間、背中がゾクッとした。 「……え?」 「先生が知りたいのって、こういうことですよね?」 橘の手が、私の髪をそっとかき上げる。 そのまま、耳元に唇が触れるか触れないかの距離まで近づいて―― 「……試してみます?」