先生、それは取材ですか?


「先生、これについて詳しくお聞きしたいんですが」

橘がスマホをくるっと回して、問題の動画を再生する。

『橘ぅ……お前、もっと近くにいろよぉ……』

「ぎゃああああああ!!!!!」

私は全力で枕に顔を埋めた。

(やばい、やばすぎる、終わった……)

「先生、まさかとは思いますが、僕に対して何か特別な感情があるとか?」

「な、ない!! 絶対ない!!!」

「ふーん、でも」

橘がスマホをスクロールする。

「……ほら、こんなのもありますよ?」

『橘が彼氏だったら、私、きっと幸せだったよなぁ……』

「…………」

「先生?」

「…………」

「先生、もう一度お聞きしますが、僕に特別な感情はないんですね?」

「…………」

「ない、んですね?」

「…………」

「じゃあ、この発言はどういう意味なんでしょう?」

「…………」

「先生?」

「…………」

「先生、逃げないでください」

「無理!!!!!!!!!!」

私は全力でベッドの上を転がった。

(やばいやばいやばい!! 私、酔っ払って何言ってんの!?!? もう一生海外に逃亡するしかない!!!!)

「先生、顔真っ赤ですよ」

「うるさい!!!!!」

「僕のこと好きなんですか?」

「違う!!!」

「じゃあ、なんで僕が彼氏だったら幸せって言ったんですか?」

「知らない!! もう知らない!!!」

「へぇ?」

橘がニヤニヤしながら、少し身を乗り出してくる。