橘がじっとこっちを見てくる。
(や、やばい……なにこの雰囲気……!!)
「……で、でも、ほんとになにもなかったんでしょ……?」
「ええ、何もしてませんよ」
(ほっ……)
「僕からは、ですけど」
「…………は?」
橘がにやりと笑う。
「先生が何をしたかは……覚えてないんですよね?」
「……っ!!!」
なんか……すごく嫌な予感がする。
「だ、大丈夫……私はそんなことするわけ……」
言いかけた瞬間——
『橘……お前……今日めちゃくちゃかっこいいな……』
(……え?)
急に、脳内に自分の声が蘇る。
(……ん????)
「……先生?」
橘がニヤニヤしながら私の顔を覗き込む。
(ちょ、待って待って待って!!! なんか思い出しそう!!)
「先生、顔赤いですよ」
「ち、ちがう!! これは、その……!!!」
「もしかして、思い出しました?」
「思い出してない!!!! なんにも!!!!」
(……でも、やばい、思い出しそう……!!!)
——さらに追い打ちをかけるように、また記憶の断片がよみがえる。



