先生、それは取材ですか?

「ちょ、ちょっと待って!! なにそれ!?!?」

「僕のことじっと見つめて、『橘……お前……』って」

「いやあああああああああ!!!!!」

全力で枕を顔に押し付けた。

(無理無理無理無理!!! 絶対無理!!! なんでそんなことしてるの私!!!)

「まぁ、そこまではいいんですけど」

「そこまでは!?」

「問題は、そのあと先生が僕に——」

「ちょおおおおお待って!!!!!」

枕を投げて橘の口を塞ぐ。

「そ、それ以上言わないで……!!」

「でも、大事なことですよ?」

「いやいやいや!! 絶対ヤバいやつでしょ!!!」

「……まぁ、あれは確かに衝撃でしたけど」

「やっぱりヤバいやつじゃん!!!!」

橘は少し困ったように笑った。

「安心してください。何もしてませんよ」

「……本当?」

「ええ。でも先生、覚えてないってことは……」

橘が私をじっと見つめる。

(……な、なんか、雰囲気が……やばい)

「先生……覚えてないのは、逆にずるいですよ」

「え……?」

「僕は、全部覚えてるのに」