「……やっと着いた」
ホテルの部屋の前で、私は大きく息をついた。
「お疲れ様です」
橘は相変わらず余裕の表情。さっきまであんなに密着してたのに、本人はまったく気にしてないみたいだった。
(なんであんなに冷静なのよ……!!)
「じゃあ、先生。おやすみなさい」
「……え?」
「え? って、何か?」
「……いや、なんか、あっさりしてるなって……」
(さっきまであんな感じだったのに!? ここで終わりなの!?)
橘は少し笑って、ドアノブに手をかける。
「じゃあ、本当におやすみなさい」
「……ちょっと待って」



