紫禁嬢─魅せられし夜





店内の灰皿が設置される長椅子へ向かうと、二つしか無い長椅子の両方に、一人ずつ男が座っていた。







(‥うざ。片方に並んで座れよ‥)







向かって左側の長椅子に腰掛けると、特に奥に詰めてくれる様子もなく、なれなれしく隣の男が声をかけてきた。







「レディース?」



「うるせー。殺すぞ。話しかけんな」



「コワっ」







棒読みであしらい、百円ライターでタバコに火を付けようとすると、石が切れてつかなかった。









「‥ライター貸そっか?」



「うるせー。殺すぞ。ありがとう」







ライターを返しながら顔を見ると、並びの男も向かい側に座る男も、どちらもしょうゆ顔で中性的な良い男だった。








(サヤが好きそうな奴らだな。

てか、向かいの男デカッ)








座っているから正確には分からないが、おそらく190センチ以上はありそうな男。


片ひじを長椅子に乗せながら缶コーヒー片手にテレビを見ていて、隣の奴とは異なり、私には興味がなさそうな感じだ。







「あのサンパチ(GT380)見覚えあるんだよね。

エミリアの子だっけ?」



「‥‥‥‥」






ライターを借りてしまった手前、無視する訳にもいかなくなった。







「元エミリア」



「辞めたの?」



「まあ、似たようなもんかな」



「?」「‥‥‥」








すると、向かい側に座っていた男が空き缶をゴミ箱に投げ入れ、スッと立ち上がった。








「行くぞ、イッセー」



「え、まだ電話番号聞いてないんだけど」



「教えねえし」








そう言って視線を向かい側の男に向けると、彼は立ち去りながらボソッと言った。









「そいつ多分、メイファンの仲間」


「‥‥ああ、そういう事ね」


「‥‥‥‥」