紫禁嬢─魅せられし夜





さすが幼なじみ。私の扱いに慣れている。

報酬がチーズケーキではなくショートケーキだったら、私は単車のケツに乗っていない。






「あっ、アンリさんこんちわっす!」



「こんちわ~っす」






わざわざ立ち上がって私に挨拶をするサヤのチームの後輩たち。

無理もない。前回の助っ人では乱取り稽古の気分で相手の女ども6人を瞬殺する姿を見せつけてやったのだから。






「アンリさんこんちわっす、今回も手伝ってもらえるんすか?」



「まあ、暇だしね」



「ありがとうございます!」






不良にペコペコされるのは悪い気分ではない。


私はそもそも弱いのにイキがる人間が嫌いだし、なぜ一般人より頭も力も劣る不良が偉そうにしているのか不思議でならなかった。






「チーズケーキ二つと、アイスコーヒーね」



「かしこまりました」



「‥‥‥」






年上の店員へのタメ口。

こういうのも少しイラッとする。


不良はきっと、やり返してこないという前提の元、自分よりも格上の一般人にデカい態度を取るのだろう。

おそらく自分らが一番良く理解しているはず。

それらは全て劣等感から来ているのだと。






「サヤ達ってさあ、なんでケンカすんの?」



「そりゃああんた、一番になる為っしょ」



「一番強いチームになってどうすんの?」



「え、どうもしないよ。カッケーじゃん」



「なるほど、バカか」