紫禁嬢─魅せられし夜

【序章】






むさ苦しい男共の中で育った為か、私は女にしか魅力を感じない。





「センセ、デートしよ」



「アハハ、さすがに生徒に手は出せないかな」



「もう生徒じゃないよ」



「え?」





17才の春、私はあることを機に学校を辞めた。





「退学届を出した!?なんで!?」



「ん~特に理由は‥‥いや、あるかな」



「学校辞めちゃってどうする気!?」



「先生と結婚とか」



「バカなこと言ってないで、とりあえず職員室に戻るわよ、退学届が受理される前に」



「いいよもう、メンドくさいし」



「ダメ!そんな適当な考え」



「‥‥‥」






そう言って私の手を引く先生。


私はその場に立ち止まり、掴まれた先生の手を反対の手で軽く外した。







「一度決断した事は覆したくないんだよね。

女々しいこと嫌いなんだ、私」



「香坂さん‥‥」



「元気でね、マキちゃんセンセ」



「あっ、ちょっと!」







ここにある未練と言えば可愛い先生とサヨナラしなきゃいけない事くらいで、そこを除けば特にこの選択に悔いはない。






(帰る頃には家に電話いってるだろうな~)