時雨るる虹はどこか


そして、まだぼんやりして薄れる意識の向こう側で何かが聞こえてきた。

「、、のか!、、おーい!好花!」

あ、わたしの名前、、、

呼ばれてる、、、

まだぼんやりとする意識の中でゆっくりと瞼を開け、少し顔を上げてみた。

すると、微かに見える光りの隙間から「好花!」とわたしを呼ぶ声が聞こえてきたのだ。

この声、、、和音だ。

わたしは掠れて上手く出せない声で「たすけ、て、、、」と救いを求めた。

「か、ずね、、、に、こ、、、」

わたしはテーブルの下に身を隠していたおかげで、擦り傷くらいで大きな怪我はなかった為、テーブルの下から這い出し、木の破片や瓦礫だらけの隙間を探し、光りの先を目指した。

すると、和音がわたしに気付き「あ!好花!こっちだよ!」と、光りの隙間から手を差し伸ばしてくれた。

わたしはその手を握り締め、引き上げられると和音に抱き締められた。

「良かった、、、好花、生きてた、、、本当に良かった、、、」

そう言いながら、和音は泣いていた。

わたしはそこで気付いたのだが、わたしが住んでいた3階建てのマンションは潰れて3階部分しか残っておらず、周りの家も崩れて戦争でもあったのではないかと思う程、酷い状態だった。

そこでわたしは和音にすがりながら「虹子は?!虹子は無事なの?!」と訊いた。

和音はわたしに微笑みを見せると、すぐそばに置いてあったリュックを指差した。

その中には元気そうな姿の虹子が「にゃあ」と鳴いていた。

良かった、、、虹子も無事だった、、、

わたしは「良かった、、、」と和音に抱きつき、それからリュックの中から虹子を抱き上げると、抱き締め撫でた。