それから、虹子を引き取ったわたしたちは、わたしの家から桔梗さんの自宅へ猫用品を全て移動させた。
桔梗さんの家はわたしの家から偶然にも近く、徒歩5分程度で着ける場所にあった。
「じゃあ、はい。これ。」
そう言って、桔梗さんがわたしに差し出したのは自宅の鍵だった。
「えっ?か、鍵?!」
「無いと入れないじゃないですか。」
「そ、それはそうですけど、、、心配じゃないんですか?」
「何がですか?」
「いや、今日会ったばかりの女に、自宅の鍵を渡すなんて、、、」
わたしがそう言うと、桔梗さんはハハッと笑い「子猫を助けて、飼おうとした人に悪い人なんて居るわけないじゃないですか!俺は秋雨さんのこと、信じてるんで。」と言うと、「どうぞ。」と更に鍵を差し出してきた。
「じゃあ、、、お預かりします。」
そう言ってわたしは、桔梗さんの自宅の鍵を預かり、連絡を取り合う為にLINEも交換した。
「そういえば、秋雨さんは何の仕事をしてるんですか?」
わたしが桔梗さんの家のソファーに座り、虹子を撫でて居ると、桔梗さんがそう訊いた。
「Webデザイナーです。」
「Webデザイナー?かっこいいなぁ。」
「いやいや、医師の方がかっこいいじゃないですか。」
「いやぁ、、、俺なんて、まだ胸張って"医師です"なんて言えるような立場じゃないんで。」
そう言いながら、桔梗さんはわたしに珈琲を淹れてくれた。
「ありがとうございます。」
「ミルクと砂糖は?」
「ブラックのままで大丈夫です。」
そう言って、わたしは桔梗さんが淹れてくれた珈琲を入ったマグカップを持ち、「いただきまーす。」と、フーフーと冷ましてから、火傷に気をつけながら一口だけ飲んだ。



