「あ、お医者さんなんですか!それは、忙しいですよね、、、」
「まぁ、まだひよっ子みたいな医師なんで、怒られてばっかりですけどね。」
そう言いながら、苦笑いを浮かべ桔梗さんは言った。
「でも、確かにそれなら、、、なかなか猫を飼うのは難しいですよね。、、、分かりました!すいません!呼び止めて無理なお願いまでしてしまって!」
わたしはそう言うと、「それじゃあ!」と虹子を迎えに行こうと歩き出すと、今度は桔梗さんが「あ、秋雨さん!」とわたしを呼び止めた。
「はい?」
桔梗さんから呼ばれ、足を止めて振り返ると、桔梗さんはわたしの元へ駆け寄って来た。
「俺が、飼いますよ。」
「えっ、、、でも、、、」
「一つ提案なんですけど、子猫は俺の家で飼います。ただ、俺は当直があったり急患で家を空ける時間が長くなったりするので、その時は秋雨さんがうちに来て、子猫と一緒に居てあげてくれませんか?一度捨てられた経験があると、絶対不安がると思うので。」
桔梗さんはそう言ったものの、途中で"あれ?俺おかしなこと言ってる?"と思ったのか、「あ、無理ですよね!すいません、突然変な提案をしてしまって!」と焦って言った。
そんな桔梗さんの姿にわたしはついクスッと笑ってしまった。
そして、わたしは「それ、さっきのわたしみたい。」と言い、桔梗さんもそれに気付き「確かに。」と二人で笑ったのだった。
その結果、桔梗さんの提案を承諾し、わたしは桔梗さんと二人で虹子を迎えに行った。
「虹子〜!迎えに来たよ!」
あんなに衰弱していた虹子は元気になっており、わたしはホッとした。
そんなわたしに「にこ?」と訊く桔梗さん。
わたしは「わたし、雨とか虹が好きで。それで"虹"に子どもの"子"で虹子(にこ)と名付けました!」と答えた。
そう言うわたしの言葉を訊き「良い名前ですね。」と言うと、桔梗さんは「虹子ちゃん、今日からよろしくね。」と虹子の頭を撫でてあげていた。



