次の日、わたしは9時開院の動物病院へペットを連れて歩ける為のリュックを背負い、いつもの海沿いの道を歩いていた。
まだ水溜りは残っているが今日は天気も良く、海の香りがそよ風に乗って吹いてくる。
すると、虹子を拾った公園の前に一人の男性が立っていた。
白いシャツにデニムを履いたシンプルな服装で、年齢はわたしと同じ27〜28歳くらいだろうか。
彼はデニムのポケットに手を突っ込みながら、公園の中を見つめていた。
そこでわたしは思った。
まさか、あの人が虹子を捨てた飼い主なのでは?
どうなったか気になって見に来たのか?
犯人はまた現場に現れるとか、何とかって言うし、、、
そう思い、わたしは思い切ってその人に声を掛けてみることにした。
「あ、あのぉ。」
すると、彼はふとこちらを向いた。
サラサラの黒髪に背が高く整った顔立ち。
まさに爽やかイケメン。
じゃなくて!
「あの、何を見てるんですか?」
わたしがそう言うと、彼は「あぁ、、、」と言って、再び公園の方に視線を向けた。
「昨日の朝、ここを通りかかった時に段ボールに入れられた子猫がいて。連れて帰りたかったんですけど、俺、昨日寝坊しちゃって遅刻寸前だったんで何もしてあげることが出来なかったので、ずっと気になってたんです。でも、居ないってことは誰かに拾われたのかなぁ。保健所に連れて行かれていなければいいんですけど。」
彼はそう言うと、柔らかい表情で虹子が居た場所を見つめていた。
「あ、あの子猫なら、大丈夫ですよ。」
「えっ?」
「昨日、わたしもここを通りかかった時に鳴き声で気付いて、だいぶ衰弱してたので動物病院に連れて行ったんです。」
「え!あの子は大丈夫だったんですか?!」
「はい、特に怪我もなく命に別条はないと言われました。」
「良かったぁ、、、」
わたしの言葉に安堵の表情を見せる彼。
この人は、良い人だった。
一瞬、犯人なんじゃないかと疑ってしまったわたしを殴ってやりたい。



