時雨るる虹はどこか


そして、わたしは虹子を抱き締めながら空を見上げた。

空は、この惨状とは裏腹に快晴で、しかも雨が降ったのか波しぶきのせいなのか、大きな虹がかかっていたのだ。

「虹だ、、、」

わたしがそう呟くと、和音は「それより病院行こうよ!俺が連れて行くから!」と言ったが、わたしは首を横に振った。

「虹、、、虹を見に行きたい。」
「え?ここからでも見えるじゃん。」
「そうじゃなくて、、、虹がどこから始まってるのか、見たい。」
「好花、そんなこと言ってる場合じゃ、」
「ねぇ、和音、、、お願い。」

わたしがそうお願いすると、和音は仕方無さそうに笑い「本当に、好花は不思議な奴だよな。」と言い、立ち上がると「ほら、行くぞ。立てるか?」と言った。

わたしは虹子をリュックの中に戻し、そのリュックは和音が背負うと、わたしを支えながら歩き始めてくれた。

瓦礫の上を歩き、ひび割れた地面と倒れた電柱を跨いで、わたしたちは虹の始まりを目指して歩いた。

歩いても歩いても、全然虹には近づけない。

わかっている。
虹の始まりがないことなんて。

でも、あると信じたかった。

こんな状態だからこそ、見つけ出したかった。

歩いてもなかなか近づけない虹は次第に薄くなっていく。

わたしはそこで足を止めた。

「、、、好花?」

足を止めたわたしに和音がわたしの名を呼ぶ。

「ありがとう。虹の始まり、見つけた。」
「えっ?」
「ここだよ。」
「え、ここ?」

そう言って、和音は空を見上げた。

しかし、意味が分からないような表情で辺りを見回していた。

「虹の始まりは、わたしたちがいる場所なんだよ。始まりは、自分たちで決める。決まってるわけじゃない。」

わたしがそう言うと、和音は納得したように「そうだな。」と微笑んだ。

いつだってそうだ。
人生は自分から始めようとしないと始まらない。

無いものを探したって仕方ないんだ。

「虹子もわたしたち仲間だって、決めて始まったんだもんね。」

わたしがそう言うと、和音は「んー、一つ訂正していい?」と言った。

「何?」

わたしがそう訊くと、和音は言った。

「仲間じゃなくて、家族だよ。さぁ、これから始めていこう!」



―END―