1番前の席で最悪だと思っている私とは反対に、1番前の1番端で1番嫌な席にも関わらず、横の人と笑い合う航くんは、緊張という言葉が見つからない。
入学式が始まる前の教室はなぜか寒かった。
胸元につける花も皆んながつけていると輝いてみえるのに、私の花は哀しく見える。
____『このネガティブな性格、どうにかならないかな』
胸がドキッと跳ね上がる。
昔、親友に言われた言葉が今でも私を苦しめる。
自分でも分かっているし、人に迷惑をかけない程度に抑えていたつもりだった。
つもりだっただけで、うまくいってなかった。
地元を離れ、此処(教室)には私の性格は誰も知らない。
チャンスしかない。
ただ、航くんには見透かされている。
だってだって、教室に入るまでの距離で誰かと話すなんて思わなかったから。
ああ、また言い訳を。
航くんはただただ優しさを私に与えてくれたいい人なのに。
教室を見渡す事ができないこの居場所に、私は肘をつき自然と横を見てしまう。
「やほ〜〜」
クラスメイトと話していると思っていた航くんは、私をしっかりと見つめていた。
「え」とまた情けない声。
「胡桃ちゃん、顔顔。こうして」
何事も思っていない航くんは自然と私に話しを続ける。
「こう?」
指の腹で頬を撫でるようにマッサージする航くんを真似してみる。
「多分これ緊張ほぐれるよ」
「多分?」と言い私は思わず笑ってしまう。

