「じゃあ帰りましょうか。
外ももう暗くなってきたわ」
貝崎さんの一言で、皆が自分のカバンを持ち始める。
ただ、航くんを除いて。
「航くんは…初美ちゃんのところ?」
「うん、そうだね。
心配だから手伝いに行ってくるよ」
ああ、なんだか心が痛い。
「その手伝いって、どげんなと?」
私も、おそらく貝崎さんも思っていただろうことを、青空くんは率直に聞く。
だけど航くんは、口を噤んで、目を泳がせる。
「ふーん、なんか怪しかね。
ね、漣もそう思っとっちゃろ?」
不意のフリに私こそ目が泳いでしまう。
「え、あ、えぇ、まあ、ちょっとね?」
これじゃあ、怪しいと言っているものだ。
「別に怪しいことじゃないよ。
ただ、今は言えないかな。
ごめんね、初美ちゃん待ってるから行くね」
一方的に言って、航くんはカバンをぶっきらぼうに持ち、空き教室から出ていってしまった。
「もう暗いし、初美さんもきっといないのに
行くって…そんな親密だったかしらね?」
私に言っているのか、貝崎さんも青空くんも体がこちらに向いている。
「私たちが、入る隙はないよ…
航くんが私たちに言えないことだもん。
あんまり探ったりしたら、嫌われちゃう気がするな…」
「あら、珍しく意見を言うのね」
「え!?」
「まぁ、お前はいつも意見言わんで見よるタイプやもんな〜」
「ええ!?」
「成長ね」
「成長したとやね」
「2人してそんな言わないで!」
「あら、照れてるの?」
「照れとる照れとる」
「もお〜〜!!!!」
2人して私を揶揄うこのやり取りに、いつも救われていることを、いつか2人に言えたらいいな。

