「航くんは緊張してないの…?」



「んーーなんか別に、まだよく分かんないから」



「ほう…?」



深いような浅いような…



2人並んで教室に向かう姿は、側から見たらもう友達だろう。


だけど、男女で並んで歩いているせいか、すれ違う同級生たちの視線がやたらと刺さる。


そんな私の不安感をもろともしない航くんは、微笑みながらふわふわした表情のまま安定していた。



教室に入るのが遅かったせいか、ドアを開けた瞬間クラスメイトたちのザワザワした声が一瞬静かになる。



ああ、これ私のせいだ。


私が不器用で準備がなってないせいで、航くんまで痛い視線を浴びることになって、友達作りが遅れて、ぼっち弁当することになって……


ああ、やってしまった。



「お、俺たち席近いね」



ぐるぐると考えていたマイナスな感情が一瞬にしてかき消される。



天使のような微笑みで、航くんの周りが光って見える。



「ほんとだ…」



「うれし〜〜〜」



こんなにほわほわしていて自分の世界がありそうな航くんとこのまま話せる程度の仲でいることはできるのだろうか。



想像していたような学校生活からは少し遠のいたけれど、男の子と友達のような会話を入学初日からできた事が何よりも成長であり、嬉しい出来事だ。



だけど、このまま航くんと仲良くいられる確率は低い。


昨日の夜、緊張で眠れなくてネットサーフィンしていた。


初めてできた友達と3年間仲良しでいられる確率は低い、らしい。



なんて、良くないことばかり考えていても仕方がない。



横の横の席を見ると既に航くんは隣の子と話し込んでいた。