「胡桃のクラスメイトから聞いたんだ。
ネガティブすぎていじめられて保健室登校になったってね」
「そのクラスメイトって……」
「涼川 花純って女」
親友の名前。
「ていうか、俺、涼川さんって人に猛アタックされてたんだよね。
笑っちゃうけど、めちゃくちゃしつこくて」
やめて。
「んでさ、断り続けてたの。
胡桃のことすげぇ好きだったし。
そしたら、その人めーっちゃ胡桃のこと話す話す。
ほんとは好きなんじゃないの?ってくらい」
やめてよ。
「それで、昨日いきなり胡桃がいじめられてること知らないの?って言われて、俺って全然信用されてなかったんだーーってなって、冷めたってわけ」
「やめてったら」
「は?」
「もうやめて」
「それ誰に言ってんの?」
「え?」
「俺?それとも涼川って女?」
「それは……」
私はこの時、自分って頑固な気持ちも意思もない。
ただの石ころなんだと、気付いた。
いじめられてもなお、花純のことを嫌いになれてないなんて、誰が信じるだろう。
だけどわたしが"やめて"と庇った相手は明らかに花純に対してだったんだと思う。
この先、金城くんが私を見ることもなかったし、
勿論それは私が見てなかったからだったと思う。
ただ、別れた。
それだけにしたかった。
記憶はこれきりで、曖昧なまま終わったんだ。

