何も返事ができない私を置いて、金城くんは話し始める。



「俺に隠す必要あったの?」


「なんのこと…?」



私がこう言った瞬間、金城くんは何かを諦めたかのようにため息をついた。



「今更だけど、保健室にいる理由聞いてもいい?」



本当に今更だ。


ずっと長い年月を一緒に保健室で過ごしてきたのだから、理由なんて話す必要ないのではないかと思う私からしたら、金城くんのあまりの急さに一歩下がる。


だけどそれは金城くんからしたら通用しないのかな。



「言わなきゃ、ダメなこと?」


「ダメっていうか、付き合ってるのになんか離れてる感じするんだよ」



「でも、ほら。金城くんだって保健室にいる理由話してないじゃん」


「普通にサボりだって言ったよ」


「ほんとにサボりなの?」


「なんで俺ばっかり責められなきゃいけないわけ?
え、普通に考えておかしいよね?」



今までの生意気とは程遠いこのやり取りに私は緊張感が走る。


ここで何か地雷を踏んでしまえば、今までの思い出が泡となって消えてしまう。



「ごめんね」


「いや、謝ってなんて言ってないよ。
ほんとにネガティブな思考しかないんだな」






…………


……………



………




_____『このネガティブな性格、どうにかならないかな』



重なるあの言葉に、私はすぐに金城くんから目を逸らす。


今まで見れていた景色が、ドス黒く塗られ、金城くんの明るさをも消し去った。