「金城くん!帰ろっか。
そろそろ門、しまっちゃうよ」
うたた寝をしている金城くんの肩を揺らす。
虚ろな目をした金城くんは、大きなあくびをした後に、バッグをぶっきらぼうに持つ。
返事がない。
いつもなら、不機嫌でも返事をしてくれているのに。
なんだか嫌な予感がした。
校門をでてからも、金城くんは一言も喋らなかった。
私が「ねえ」と声をかけても。
濃い時間を過ごしたせいで、倦怠期を迎えてしまったのだろうかとも考えたが、それにしたって急すぎる。
いきなりくる、とはいつかのテレビで言っていたような気もするが、そんなまさかと疑ってわたしは見て見ぬふりをすることにした。
いつかまた普通に戻るよね。
「じゃあ、行くね」
いつもなら、駅の中まで入ってきてくれる金城くん。
だけど私は、ロータリーで別れることにした。
少し期待してしまう自分がいて、心が落ち着かない。
「あのさ」
え、うそ。
今の今まで口を開かなかった金城くんが、一言、あのさなんて言うから、私はすぐに逃げたくなった。
これは、もしかして別れ話の展開なんじゃ…!
「あの、ごめん!私お母さんから、あの〜卵!卵買ってこいって言われてて、だから今日は急ぐね!!」
この状況で、この焦りようは金城くんも困った顔をしていた。
「話聞いて、胡桃。お願いします」
敬語なんて、使わないでよ。
ずっと生意気だったじゃん。

