「あ、いたいた〜!」
声が聞こえ、一瞬にしてゲームセンターの音が耳に広がる。
その反動で心臓がバクバクと強く脈打つ。
ただ、それが反動のせいじゃないと分かるのはすぐだった。
目の前には恋夜さんが企んだ表情で立っていた。
嫌な予感が的中してしまったのかもしれない。
一歩、また一歩と下がる。
「さーざーなーみー、くるみちゃーん!」
大きな声で私の名前を呼ぶ恋夜さんは、絶好調の様子。
「わたし〜、あんたがいじめられてたこと〜
ちょ〜〜〜こまかく知ってんだ〜〜」
ゲームセンターとはいえ、恋夜さんの大きな声と、気になる言葉に、周りのお客さんも動きが止まる。
私もただただ恋夜さんを見ることしかできなかった。
「漣さん、ここでるわよ」
貝崎さんが私の腕を掴む。
「逃げたら明日学校で行っちゃおっか〜〜!」
ギュッと私の腕を掴んだ貝崎さんの手は震えていた。
それは私のせいで注目を浴びることになった恐怖か、それとも怒りか。
「ま、逃げれないけどねーーー!」
ハスキー声で叫び続ける恋夜さんを合図に
先ほどまでいなかったガタイのいい男4人と、いつもの取り巻き女子が私たちを取り囲むように立つ。
「おい、なんやこれ。意味わからんっちゃけど」
「…ごめんなさい」
私には謝ることしかできなかった。

