教室に向かう途中でもリボンに苦戦する私。
この紐リボン、元々出来上がってるリボンだったらよかったのに、と制服を買った時に何度も思った。
不器用な私には制服との相性は最悪だった。
自分のクラスを見つけ、リボンを手に持って入ろうとした……
ちょっと待って自分。
リボンつけないで教室に入って、校則を破るヤンキーだ、なんて思われたらどうしよう。
緊張で考える頭がおかしくなってしまっているのも
男の子の優しさに気づけなかった私にも
気が動転しているのも
全部私のダメな部分だ。
友達作りを諦め、トイレにでも行こうと一度開けようとしたドアから手を離す。
「わ!」
綺麗でシワのないブレザーが私の視野全体を包み込む。
「びっくりした〜急に振り返るじゃん」
顔をあげると先ほどの男の子が、冷静に、表情変わらずに立っていた。
「え、ずっと私…」
「もしかして教室に入るの緊張してるのかなって。
声かけたんだけどね」
気持ちが安定している声のトーンに、なぜか安心感があった。
「入る?入らない?」
「あ、私リボンつけてから入らなきゃと思って…」
「ああ、それ」
と、リボンを指差し、微笑んだ。
「そう、これ」
「着けようか?」
「へ?」
しまった。
予想と違う答えが返ってきたから、思わず間抜けな返事をしてしまった。

