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「漣さん!!!」
教室に入るや否や、貝崎さんが私に向かって大きな声で名前を呼ぶ。
それはまあ、教室に響き渡るほどに。
「貝崎さん…?」
「漣さん…また嫌なことでもされた?」
私の頭から腕を確認しながら触り、まるで誘拐された子供の無事を確認し、傷がないか探している親のようだった。
「なん、で…?」
こんなにすぐに先ほどの出来事が広まってるとは露知らず恐る恐る聞く私に、貝崎さんは驚いたように大きな目をしてみせた。
「なんでって、さっき下で騒ぎが起きてるって
学校中で噂が響き渡ってて、まさかと思って…
漣さんが無事ならいいのよ。
だけどやっぱりあの事があったから心配なの…」
「ありがとう…貝崎さん。
でも、私なら大丈夫だったよ」
「大丈夫だった、じゃ遅いわ。
漣さん自分が思ってる以上に可愛いし、いい子だし、何されても騙されそうで怖いのよ…」
「……そんな、可愛くていい子だなんて。
言い過ぎだよ」
思わぬ褒めに、先ほどのことなんて忘れかけて
つい鼻の下が伸びる。
「あんたって…結構楽観的なのね……」
「えっいや、ちょっと照れちゃった…」
「まぁいいわ。
今日は一緒に帰りましょう」
「ありがとう、貝崎さん!」
「お礼はいいのよ」
それより…と言いかけた貝崎さんは
私の隣にずっといる航くんのことを見つめる。
そうだ…
航くんと貝崎さんと青空くん
少しギスギスしていることを思い出し、急に居心地が悪くなる。

