「分かった。もういいよ」


あーあ。


下手すぎるどころか、呆れられてしまう始末。


不器用なのは分かってはいたけど、こんなにも人との関わり方に難があるとは。


私を追い越して前を歩く航くんの背中は男らしくて、こんなことになっているにも関わらず、キュンとしてしまう。



「さーざーなーみーさーん」


またまた背後から私を呼ぶ声。


だけど、あんまり聞き覚えのない声で
恐る恐る振り返る私。





目が合う、恋夜世奈。



企みの笑みを浮かべるその表情はもはや恐怖とかではなく、それ以上に強い感情だ。


粘着質な性格らしく、彼女の今のターゲットは明らかに私だった。


私があの時、きちんと彼女の声を無視せずにいたら
こんなことにはならなかった。


誰もが思うだろう。

自業自得、だと。



「なにかたまっちゃってんのー」


取り巻きの2人も大きな声で笑い出し、私は周りに可哀想な目で見られる。


ああ、目をつけられて可哀想、と言うかのように。



「あ…えっと。
あの時はごめんなさい」


「はー?聞こえないよーー?」


キャハキャハと止まらない笑い声に、私は恐怖で手が震え出す。



____『このネガティブな性格、どうにかならないかな』



つい先日まで忘れることができていたはずのあの言葉が、また私を苦しめるように思い出す。



「いい加減にしてくださいよ」


「!!」


先に校内に入っていってると思っていた航くんが
私の横にいる。