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「おはよー胡桃ちゃん」
次の日の朝、校門で後ろから声をかけられる。
振り返って、少し眠たそうな目をしている航くんと目が合う。
いつも以上に目がとろんとしていて、かわいらしい。
ただ私はこれ以上目を合わせてはいけないのだと思い出し、すぐに目を逸らした。
航くんの迷惑にならなければ、もはや幸せなのだと、昨日寝る前に考えた私の最大限の施策だ。
声をかけてくれるだけでもありがたいのだから、友達以上の関係になろうとするのだけは避けよう。
_____『事実、バックに強い男の人もいるって』
昨日、貝崎さんが言っていたことに嘘がないとはいえ、もう少し私も気を張らなければいけないと思った。
でも………
航くんは、きっと
「胡桃ちゃん?」
ほら。
背後からまた声がする。
このまま聞こえないふりをするのは逆に怪しまれてしまうのでは、と思った私は再度振り返り、目を合わせる。
なにも、悟られないように。
「んー?」
「んー?って。さてはまだ本調子じゃないでしょ胡桃ちゃん」
「いやぁ、全然元気なんだけどさ〜」
下手すぎる…!
私ってば誤魔化し方がこんなにも下手だったなんて…!

