「あ、そうだ」


「?」


「借り物競走、代わりに青空さんが出たから安心して」


「うそ…青空くんが?
でも、男子だし…ダメじゃ…」


「女子全員、委員会の役割があって見事に誰も出れなかったの。
先生に許可を得ての出場よ。心配することないわ。
それに……」


「それに?」


「青空さん、金髪ロングのウィッグを被っての出場で大盛り上がりよ」



笑いを我慢していたのか、貝崎さんは肩を震わせながら言った。


想像しただけでも、私も笑い転げてしまいそうだ。



「青空くん、体を張ってまで…」


「ただ……」と呟き、少し黙って俯く貝崎さん。



「貝崎さん?」


私が名前を呼ぶと、貝崎さん意を決したのかこちらを見つめた。


「……ただ、お題は【好きな人】だった。
だから漣さんがもし引いてたら、って思ったら…ね」



「そっか……」



確かに私がもしそれを引いていたらと思うと
場が凍るに違いないし、
思い当たる人なんて1人しかいないのに……




「それで、青空くんは大丈夫だったの?」



「青空さんのことだもの。大丈夫よ。
華麗にスキップしながら、愛須さんの元へと向かっていったのよ」


「ええ?航くんを!?」


「ええ、まるでカップルだった。
でも愛須さんの表情は冷徹染みていたわね…」



青空くんのことを可哀想に、と言いたそうに
貝崎さんは頭を掻いた。