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目が覚めた時、外からは応援が微かに聞こえてきて
体育祭の最中だということをすぐに認識することができた。
私、あの後……
私はハッとし、手に何か温かな感触があることに気付く。
私はベッドから動けない状態のまま視線を動かす。
その先には、"航くん"がベッドの横で私の手を握り、その手の上に顔を乗せ、寝てしまっていた。
なんで、
なんで手を握っている…!?
航くんに手を握られるなんて、私は前世どれだけ徳を積んだんだ。
こんなことが起こると思っていなかった私の胸は高鳴るばかり。
だけど、スーッスーッと寝息が聞こえ安堵する。
なんとなく、私はあの後彼女たちが航くんに何かするのではないかと心配だったからだ。
「ん………」
航くん?と声をかけたかったが、少し気まずさもあり
私は寝起きの航くんを見つめることしかできない。
航くんは私が目を覚めたことに気付かず、手は握ったままボーッと一点をみつめている。
ただ私は、航くんの不意にはかなり弱いため、逃げるかのように寝ているフリをして、時が過ぎるのを待つことにした。
目を瞑っているから、今航くんが何を見て何を思っているのか想像もできない。
ただ、航くんはずっと手を握りしめたまま動かなかった。
「!?」
思わず声がでてしまいそうになる。
航くんは私の手の甲を優しく撫でる。
とてもとても優しく。
先ほどまで手を握っていただけだったのに、加えて思わぬ出来事を生んでいた。
手を握られることだけでも、ものすごく照れてしまうのに。
こんなことされたら、寝ていると思われているのに
顔が真っ赤になってしまう。

