「航くん、なんかいつもと違うよ?」
「同じだよ」
「そ、そういえば体育祭の後、打ち上げあるらしいけど行く?」
いつも優しく天使のような航くんが
今日は打って変わって
表情がかたい。
私がみんなに保健室に行けと言われてるのに、頑なに行かないせいでかな?
それとも体育祭のくせに体調管理できない私に怒っているのかな……
……って、熱血男じゃあるまいし。
話題を変えようと必死な私。
対、私を見つめる航くん。
「航くん……?」
「話逸らさないでよ」
___『話逸らさないでよ』と余裕なく辛そうな声。
「…!?」
航くんは私の腕を取り、グッと体を引き寄せる。
意外と男らしい強さに不覚にもキュンとしてしまった。
「航くん、やっぱりなんかおかしいよ…」
距離が近くて、顔すら見えない。
きっと私の顔は真っ赤だろう。
顔全体に広がっていく火照りが徐々に最高潮に達していくのが伝わって、余計に恥ずかしくなる。
「なんか妬けるんだ」
小さく呟く航くん。
この距離でも正確には聞こえなかった。
「え?なんて言ったの?」
「胡桃ちゃんに嫌われたくないからもう言わない」
「なんかずるいよ」
「…保健室、行こう。
顔も赤い」
「それは…ッ」
それは"航くんのせい"
…なんて言えず、私は航くんから握りしめた手を静かにほどく。

