やばいと思い、目を逸らそうとしたのも束の間。
男の子は、私をみて手招きをしたのだ。
わ、私…?
戸惑いながら、自分を指差し確認をする。
うんうんと頷く男の子。
間違いなく私を呼んでいる。
中学の時、男の子と話すことなんて滅多になかった私が今、男の子に手招きをされている。
ここで律儀に行ったら綺麗な桜の下で男の子と2人きりになる。
ここで行かなかったら教室に一番乗りして友達作りを始める事ができる。
私からしたら、どちらも難易度高めなんだよなぁ。
男の子はずっと固まってる私に困ったのか、頭を掻いては傾げていた。
遠くからのシルエットだけでも表情が見えてくる。
ごめんなさい。
私は男の子からの視線から背を向け、群れの流れに沿って歩き出す。
ごめんなさい。
謝ったって向こうは遠い私の顔を覚えているわけがない。
ただ、視線を感じ、優しさで私を呼んでくれただけに違いない。
ここは、ありがとう、ということに……
「待って!」
「ぅえ!?」
咄嗟に声がした方を振り返る。

