「え、ちょっと待って虫」
「へぇっ!!??」
虫が大の苦手な私。
"虫"という言葉を聞くだけで、私は大袈裟に反応する。
「捕まえた」
「え?」
私の視線の先には、私の手首を掴む航くんの綺麗な手。
そう、航くんは私の手首を掴み、上にあげ、顔が見えるようになんなく成功してみせた。
「あっ、胡桃ちゃんが虫ってわけじゃないよ」
「えっと、あ、うん。大丈夫なんだけど…」
「あっごめん」
「いえいえ…」
クラスメイトの視線にようやく気付いたのか、航くんはゆっくりと手を離す。
「体調悪い?」
航くんの真剣な眼差し。
たった一言でこの破壊力。
「大丈夫なのに…」
「ダーメ。
無理は良くないよ」
「分かった」と言いかけたところで、「愛須!先生が呼んでるぞ!」と航くんはクラスメイトに呼ばれる。
なんとなく、気まずい雰囲気になってしまい
私は咄嗟に航くんから距離をとる。
その姿に航くんは一層困ったように眉を顰めた。
「愛須、俺が連れて行くけん。行けや」
見かねたのか、途中から会話を聞いていたのか、分からないが、青空くんが間に入り気まずい雰囲気を変えてくれた。
「だ、大丈夫だよ。
私1人で行けるから」
「ほんと、ハッキリしぇんよな。イライラするわ」
そういう青空くんは、そんなハッキリ言わなくてもいいのに……と思う。
言い返せるわけでもないので、ここはもう従うしかない。
「待って」

