「おはよ、貝崎さん……」
普通に挨拶したつもりなのに、貝崎さんは私を見るなり「げ」といい、意味深な表情を浮かべた。
「貝崎さん…?」
もう一度問うと、貝崎さんは目をぱちくりさせて正気に戻ったかのように「おはよう…」と言った。
だけどすぐに私の両肩を掴み、
「保健室に行った方がいいわ」と言った。
「いや、いやいやいや
これから体育祭だし、気合い入ってますから大丈夫です!」
と言い返し、貝崎さんは困ったように自分の髪を触る。
「でも……」
「大丈夫!」
(ただ、航くんの無自覚な言葉に惑わされて寝不足なだけなの…)なんて言えず。
「なんしよーと。早よ校庭行かんと?」
いつの間にか青空くんも登校していて、すでに鉢巻を頭に巻いていた。
「青空くん、気合い入ってるね」
「当たり前ばい……ってなにそん顔」
「え?」
「顔色悪すぎやろ。早よ休んでこいや。」
「大丈夫なんだけど…」
「やっぱそうよね」
と、スッと後ろにいた貝崎さんも賛同するかのような勢いで青空くんの横に入り、私を強く見つめる。
「そんなに?」
「「そんなに!」」
「気が合ってますね…」
「「関係ない!(なか!)」」
ハハハと笑い、別の話題へと2人を誘導し保健室に行くという流れを阻止するのに成功した。
ただ、1人を除いて。
「おはよー胡桃ちゃん」
聞き覚えのある優しい声が耳に入り、咄嗟に顔を背ける。
本当に2人が言うように顔色が悪いのであれば、航くんは絶対に心配するだろう。
ただの寝不足で顔色に影響がでるなんて、貧弱だと思われて、この先も変に心配されるのもなんだか違う気がする。
「おはよ、航くん」
目を合わすことなく、鉢巻を探すフリをする。
「胡桃ちゃん…?」
「んー?」
「元気ない?」
「いやー?すっごい元気だよ」

