何事にも最悪な事態というのは起こるもので、私は完全に出遅れてしまったらしい。
「連絡先交換しようや!前ん席嫌だっけど愛須がおってよかったわ」
「連絡先って普通にメールアドレス教えればいいの?」
「普通にLIMEなんやけど。え、地元ん違いでてる?」
「まじかーー、俺それ面倒だからやってないかも」
「まじで!?ちょっとこれば機に始めりぃ!貸してみんしゃい!」
横で繰り広げられる会話が嫌でも聞こえてくる。
聞いてませんよー、とでも言うように私は机に向かってうつ伏せになってみる。
「あれ、胡桃ちゃん寝てる?」
え?
え?
何で私の名前?
何で私の話題を?
どうしようこれ。
反応した方がいいのかな。
航くんの声がはっきりと聞こえた。
いや、でもこんな寝付きのいい人いない。
これはやっぱり、反応を……
「寝とーんやなか?」
青空くんの冷めた声が聞こえてイヤな汗もかく。
「疲れちゃったんだろうね」
「きつかと?入学式が?」
「うん。胡桃ちゃん朝からずっと顔真っ赤だったからね」
真っ赤……って。
私そんなに顔を真っ赤にしてたんだ……と思うと耳まで熱くなってしまう。
「本当や。耳まで赤い。うける」
うけてもないであろう青空くんの表情が伝わる。
「可愛いよね」

