「自分に素直になれ。俺なんかの愛情を受けるよりも、自身の親の愛情を得るべきだ」
電話の外から作太さんが言う。
「でも、私血がつながって」
「血のつながりだけが親子関係じゃない。それに、親戚だろ? 他人じゃないじゃないか。子どもにとって親っていうのは大事な存在だ。今は甘えとけ」
「……」
「俺は、親という物を満足に享受することなく、大人になった。あれから七年たつが、今も実感はわかない。親という存在にありつけている今こそが幸せなんだ。親というのは子どもよりも早く死ぬ。そんな中、しっかりと愛さなければならないんだ。育ててくれる人阿木るっていいものだぞ」
「私は……」
「いつでも苦しくなったら来ていいから。俺のメールも持ってるだろ」
「うん」
「夏休みが終わる時には家に帰りな」
そして、お母さんとの電話に戻して、私は夏休みの終わりに帰るという事を伝えた。
そこから最後の作太さんとの一週間を享受した。



