「最初は、ほんの出来心だった。こんな体験初めてだったからな。家出少女を家に招くという事は。でも、思ったんだ、誘拐は犯罪。たとえそれが両者の同意のうえで成り立っていたとしても、未成年の場合は犯罪になる。だから、連絡を取り合ってたんだ」
「だから、家に帰ることを促してたのですね」
「ああ、だけど、お前は帰ってくれなかった。だから、俺はお前を育てることにした。無理やり家に帰すというのは得策ではないと、俺とお前の母さんが思ったからだ。とはいえ、もうすぐ夏休みが終わる。もう気づいただろ、夏休みの末には家に帰れ」
「そんなこと、あの人たちは私を厄介者扱いしてるんですよ」
私のことを大事に思ってくれている。そんなわけがない。
「私をここに置いたのだってそう、厄介払いするためなんだよ」
その方が暮らしやすいから。
「いや、そうでもないみたいだ。電話だ」
そう言われ、電話機を渡された。
通話相手はお母さんなのだろうか。
「出たくない」
「出てくれ、頼むから」
困った笑みを浮かべられては仕方ない。
私はしょうがないと、電話に出た。



