「あれはシンプルに、俺としてもやらかしたと思ってる」
「……先輩が本当にさらったんですか?」
そんなこと信じたくない。
「いんや、俺はむしろ止めたほうだ」
「それって」
先輩は無実っていうこと?
「俺は、中学の友達に誘われたんだ。一緒に遊ばないかって。だから驚いたよ。そこにまさか縛られた中学生がいたなんてな。どうやら、あいつらは若気の至りで誘拐したらしかった。『イヤー奴隷を見つけてきましたよ』なんて言われた時には驚いたよ。だから俺は、仲間をボコった。犯罪行為だからな。その後、俺自身で助けても良かったんだが、それじゃあ反省しない。だから警察を呼んで事件を丸く収めたんだ。ああ、あの時顔を見られてたのか、想定外だったな」
「なら、先輩は、むしろ助けた側だったんですね」
単に一派であると勘違いさせてしまったからってことなんだ。
警察も警察で、通報してくれた人の話はしなかったってことね。
「ああ、とはいえ、彼女に嫌な思いをさせたことは事実だから、そこは反省しなきゃいけないんだけどな」
「良かったー」
私は思わず、そう呟いた。
先輩は助けた側だったんだ。
「私、ほっとしました。先輩がそんなことをするような人ではなくて」
「もしかして俺を疑ってたのか?」
そう言って先輩は私の頭をポンポンとした。



