きみの笑顔が咲く日まで


堅苦しい雰囲気の社長室へ入ると、社長は「まぁ、座りなさい。」とソファーへ座るようにわたしを促してくれた。

社長室なんて初めて入った、、、

わたしは緊張で肩の力が入った状態で「失礼します。」と、黒皮のソファーに腰を下ろした。

社長はいつも座っているのであろう一人用のソファーに腰を掛けると「仕事中なのに、突然呼び出して悪かったね。」と言った。

「いえ。あのぉ、社長、、、わたし、何かやらかしてしまいましたか?」

不安でいっぱいの中、わたしは俯き加減で社長に訊いた。

すると社長は「えっ?」と驚いた表情をしたあと、すぐに大きな声で笑い出した。

「いやいや!違うよ!楠木さんは優秀だと聞いている。何の問題ない。」
「え、、、違うんですか?それじゃあ、、、」
「うん。実はね、先程、うちの取引先の社長直々に連絡があってね。その会社がW.Tなんだけど、」

それを聞き、わたしはドキッとしてしまった。

新のお父さんの会社から、おじさん直々に連絡があった?

わたしは社長の言葉に動揺が隠せなかった。

「楠木さん、渡利社長と知り合いなのかい?」

社長からの問いにわたしは「はい、、、もう何年も会ってはいませんが。」と答えた。

「渡利社長がね、楠木さんをW.Tに引き抜きたいと言っているんだよ。」
「え、、、」
「いやぁ、楠木さんは優秀だから我が社としては居なくなられたら困るし、、、でも、うちの一番のお得意先の社長直々の頼みだから、なかなか断りづらくて、、、。遠回しにお断りはしたつもりなんだけど、本人と話がしたいと言われてね。」

おじさんがわたしと話したい、、、

でも、わたしがどうしてこの会社で働いてることが分かったんだろう。

もう10年も連絡せず、会いにも行かないわたしなんかが、新のお父さんに会う資格があるんだろうか。