きみの笑顔が咲く日まで


葵くんが住むマンションはレンガ色の10階建ての6階だった。

「どうぞ。」
「お邪魔しまーす。」

玄関に入り、廊下の電気を点ける葵くん。

葵くんは玄関のドアの鍵を締めると、「ちょっと散らかってるけど、ごめんね。」と言いながら、靴を脱ぎ廊下の向こう側へと歩いて行った。

わたしもパンプスを脱ぎ、浮腫んだ足を解放させると葵くんのあとに続く。

リビングの電気を点けた葵はカーテンを閉め、朝に脱ぎっぱなしにしたのであろうTシャツをソファーの背もたれから拾い上げると「座ってて。」と言い、洗濯機を回しに行った。

葵くんは"散らかってる"と言ったが、そんなことは全然なくて、普通にシンプルな綺麗な部屋だった。

わたしはグレーの二人掛けソファーに腰を掛けると、部屋を見渡していた。

すると、葵くんが戻ってきて「そんな見回しても珍しいものなんて無いよ?」と言い、わたしの隣に腰を掛けた。

「一花、ご飯どうする?お腹空いてない?」
「わたし、いつも夜はあんまり食べなくて。」
「そっか。まぁ、俺も缶ビールにつまみ食べるくらいで済ませちゃうんだけどさ。」

そう言いながら、葵くんは笑った。

わたしの隣に居るのは、葵くんなんだよね。

最初は、新と重ねてしまっていたけれど、この前の葵くんのわたしへの気持ちを聞いてから、わたしの中で何かが変わったのを感じていた。

葵くんは、新ではない。

葵くんは、、、葵くんだ。