わたしの言葉に葵くんは泣きそうな表情で微笑むと「わかった、約束する。」と言い、わたしをそっと抱き締めた。
それから、わたしは葵くんとの交際をスタートさせた。
葵くんは交際を始めてからも今までと変わらず接してくれた。
ただ、一つ変わったことは、お昼休みにおばさんの作ってくれたお弁当を二人で食べるようになったことくらいだ。
「んー、やっぱりおばさんのご飯大好き。」
わたしがおばさんが焼いてくれた甘めの玉子焼きを頬張りながらそう言うと、隣で葵くんは笑っていた。
「一花は本当に美味しそうに食べるよな。」
「だって、本当に美味しいんだもん。」
「俺は、そんな一花の笑顔が見れて幸せだ。」
葵くんが急にそんなことを言うので、わたしは恥ずかしくなり噎せてしまった。
それに慌てて、「大丈夫?!」と心配をして背中を擦ってくれる葵くん。
「もう〜、葵くんが急に変なこと言うからぁ。」
「変なことなんて言ってないよ。思ったこと言っただけ。」
そんなことを話しながらわたしたちはおばさん特製のお弁当を完食し、それぞれの部署へと戻った。
それから、その日は忙しいとまではいかないが、やらなくてはいけない業務が多く、午後はあっという間に過ぎていった。
気付けば定時の17時。
わたしは「疲れたぁ〜!」と両手を上に伸ばして、伸びをした。
「本当疲れたよね〜。でも楠木さんが仕事早いから、定時で帰れて助かるぅ!」
そう言ってくれたのは、隣のデスクの横浜さん。
彼女とは、チームも同じで話す機会が多い為、だいぶ打ち解けてきていた。
「えー、そっちもう終わったの?!主任、楠木さんうちのチームに入れてくださいよぉ。」
そう言ったのは、まだ仕事が終わらずグッタリしている大東担当の菅野くん。
杉浦主任は「駄目だ。楠木は、うちのチームの戦力だからな。」と言った。
すると、横浜さんが席を立ち「じゃあ、お先に失礼しまーす!」と退勤して行き、わたしも帰ろうとすると「楠木。」と杉浦主任に呼び止められた。
「はい。」
「ちょっと、いいか。」
「あ、はい。」
そう言って、わたしは杉浦主任と事務所を出ると、人気のないフロア奥の壁の裏側へと移動した。



