きみの笑顔が咲く日まで


すると、葵くんも新のベッドに座り、部屋を見渡していた。

「俺も、、、久しぶりに入ったなぁ。」

そう呟く葵くん。

きっと葵くんも新の部屋に入るのが怖くて、避けてたんだよね。

当たり前だよね、たった一人の兄弟で、、、大切な家族なんだから。

「俺さぁ、兄貴が羨ましかったんだ。」
「えっ?」
「バスケは上手くて、女子からモテモテで、何より、、、一花の彼氏であることが一番羨ましかった。まぁ、勉強は俺の方が成績良かったけどなぁー!」

そう言って、葵くんはわたしを笑わせた。

「でも、本当に一花の彼氏であることが一番羨ましかった。だから、わざと勉強の邪魔しに部屋に来たり、テレビを見る時は一花の隣に座ってくっついてみたり、、、でも、小学生だった俺なんかが相手にしてもらえる事なんて無いって分かってはいた、、、だからこそ、悔しかった。早く大人になりたいって思ってた。」

そう話す葵くんの言葉をわたしは黙って聞いていた。

葵くんがそこまでわたしを好きでいてくれていたなんて、、、
最初はあまり本気に捉えてなかったけど、葵くんの今の真剣な表情を見て、わたしは笑って誤魔化すことなんて出来なかった。

「なぁ、、、一花。」
「ん?なに?」
「、、、俺じゃ、ダメかなぁ。」
「え、、、」
「俺は兄貴ではない。でも、兄貴に負けないくらい一花のことが好きなんだ。」

葵くんの真っ直ぐな気持ちが胸に突き刺さって、苦しくなる。

その苦しさは嫌な苦しさではない。
嬉しいけれど、わたし自身が受け止められるかどうかの自信がないせいだ。

「それとも、、、杉浦主任が、好き?」
「え?!それはない!杉浦主任は尊敬しているけど、恋愛対象としてみたことはないよ!」
「良かった、、、それなら、、、」
「、、、でもね、葵くん。わたし、もし葵くんと付き合ったとしても、どうしても新と重ねちゃうと思う。それは、葵くんに失礼だし、葵くんにとっても傷付けてしまうだけだよ。」

わたしがそう言うと、葵くんはわたしの手に自分の手を重ね、わたしを見つめた。

「いいよ、兄貴だと思ってくれても。何なら葵って名前を捨てて、新って呼ばれたっていい。それくらい、俺は一花のことが好きなんだ。ずっとずっと、会えなかったこの10年間、一花への想いを膨らませて、どうしようもなくて、、、でも、やっと会えた。俺は、、、一花しか、無理なんだよ。一花じゃないと、ダメなんだよ。」

葵くんはそう言って、薄っすらと涙を滲ませ、わたしは素直な葵の心の内を聞けたことで、涙が溢れて止まらなかった。