「葵くん、どうしたの?」
「あ、いや、、、」
「何か嫌な事でもあった?」
わたしがそう訊くと、葵くんは「あった。」と答えた。
「え、何?!わたしで良かったら話聞くよ??」
すると、葵は少し間を空けてから「一花が、杉浦主任と仲良く話してたから。」と答えたのだ。
「え?」
「今、何か話してただろ?」
「あ、あぁ、、、資料紛失の件で励ましてくれてたの。」
「そっか。でも、、、杉浦主任のあんな姿、初めて見た。」
「ん?どうゆうこと?」
「俺は大学卒業して、父さんの会社に来てまだ二年目だけど、杉浦主任があんなに誰かを気に掛ける姿、初めて見た。」
そう言って、葵くんは杉浦主任のデスクの方をジーッと見つめていた。
「杉浦主任は仕事が出来る人だ。だから親父にも信頼されている。クールで真面目で、部下のフォローも出来る、部下の相談にものる完璧な上司だよ。ただ、自分からあーやって、誰かに声を掛けて励ましている杉浦主任は今までに見たことがないんだ。」
葵くんはそう言ったあと、わたしの方を向き「だから、、、一花を杉浦主任に取られるんじゃないかって、、、怖くなった。」と言った。
葵くん、、、それって、嫉妬してくれるってこと?
わたしは高身長のそんな葵くんの肩に力強く手を置くと、「わたしは、新のものだよ?」と言い、頑張って笑って見せた。
本当は切なかった。
そんなこと言いたくなかった。
でも今のわたしには、まだ葵くんの気持ちを受け止める自信がなかったのだ。
「ほら、今日は渡利家に招待してくれるんでしょ?」
「あ、、、うん。」
「久しぶりだなぁ〜!早くおばさんにも会いたい!」
わたしの言葉に少しだけ微笑みを見せた葵くんは「じゃあ、行こうか。」と言い、二人で退勤し、駐車場へ向かうと葵くんの車で渡利家を目指した。



