きみの笑顔が咲く日まで


そして次の日。

顔の広い葵くんの聞き取りのおかげて、資料行方不明事件の犯人が浮かび上がってきた。

葵くんはわたしを連れ、営業部まで来ると怒りが混じったような冷たい表情で「佐島さん。」と呼んだ。

デスクについていた佐島さんは葵くんに呼ばれ、嬉しそうに立ち上がったが、葵くんの横に立つわたしのことが気に食わなかったのか、わたしを存在しない人間かのように無視して近付いて来た。

「はい、何でしょうか。渡利さん。」

ニコニコしながらそう言う佐島さんとは正反対に、冷たい視線を送る葵くん。

そんな葵くんの表情に佐島さんは「渡利さん、何か怖いですよぉ。」と口をへの字にして凹んだような振りをして見せた。

「佐島さん。昨日、楠木さんから資料を受け取ったのは、あなたですよね?」

葵くんが淡々とした口調でそう言うと、佐島さんは「昨日も言いましたけど、わたしは楠木さんから資料なんて受け取っていません。」とキッパリ答えた。

「僕、これでも顔が広いんですよ。だから、色んな人たちに聞き取りをしました。そしたら、商品部の杉浦主任は"楠木さんは営業部に資料を渡しに行った"と言って居ましたし、事務所に戻って来た楠木さんは横浜さんには"佐島さんに渡した"と言っていたそうです。」

葵くんがそう言うと、佐島さんは慌てて「それだけじゃ、わたしが犯人だっていう証拠にはならないじゃないですか!」と声を荒げた。

「それだけじゃありません。楠木さんから受け取った佐島さんが、その資料を時間をかけてシュレッターにかけている姿を目撃している人も居ます。そのシュレッター開けてみますか?もしそれが既に破棄されていたとしても、社長に頼めば監視カメラで確認出来ますよ。」

冷静な葵くんの言葉に、顔を真っ赤にし悔しそうな表情を浮かべる佐島さん。

佐島さんは怒りを鎮められなかったのか「社長もそうですけど、渡利さんはどうしてそんなに楠木さんを庇うんですか?!」と叫んだ。

すると葵くんはジーッと佐島さんを見つめたあと「楠木さんは真面目に仕事をしてくれているだけです。それを邪魔する人物よりも、被害者を庇うのは当然じゃないですか?」と言った。

「佐島さん、、、楠木さんに謝ってください。」

葵くんはそう言ったが、佐島さんは顔を背け、謝りたくないオーラ全開だった。

この騒ぎで静まり返る営業部。

わたしは「渡利くん、もういいよ。無事に資料は取引先届けられて済んだことなんだから。」と言った。

「それじゃあ、俺が許せないんだよ。」
「わたしは大丈夫だから。ね?」

わたしの言葉に葵くんは肩の力を抜くと、静かに「一花がそう言うなら、、、わかったよ。」と言ってくれた。