その後、急いで何十枚にも及ぶ資料を印刷し、最後に一覧を印刷すると、葵くんはそれを封筒に入れ「ありがとう!行って来る!」と急いで取引先へと届けに行った。
葵くんに申し訳ないことしちゃった、、、
定時までに戻って来れるかなぁ。
わたしはそう思いながら、商品部の壁掛け時計を気にしながら定時までを過ごした。
そして、定時になるとみんな帰り支度を始め、順々に「お疲れ様ー!」と退勤していく。
しかし、わたしはデスクから動かず葵くんが戻って来るのを待つことにした。
そんなわたしを見た杉浦主任は「楠木さん、帰らないの?」と声を掛けてくれた。
「わたしのミスで営業部の渡利さんにご迷惑をかけてしまったので、戻って来るのを待ちます。わたしだけ、先に帰ることは出来ないです。」
「あれは楠木さんのミスじゃないよ。裏に何かあると思う。まぁ、それは明日暴かれるだろうけど。」
杉浦主任はそう言い、わたしの肩にポンッと優しく手を置くと、「楠木さんは自分を責める必要はないよ。じゃあ、お先。」と言って、帰って行った。
それから葵くんが会社に戻って来たのは、定時から一時間が過ぎてからだった。
「あ、やっぱり居た。」
そう言いながら、息を切らして商品部の事務所に入って来る葵くん。
わたしはデスクの椅子から立ち上がると「間に合った?!」と慌てて訊いた。
すると葵くんは親指を立て「バッチリ!」と微笑みを浮かべたのだ。
「良かったぁ、、、」
安心から身体の力が抜け、椅子に腰を落とすわたし。
「待っててくれたんだな。」
「だって、わたしだけ先に帰るわけにいかないもん。」
「俺も営業部の課長には直帰していいって言われたんだけど、もしかしたら、、、と思って会社に戻って見たら、一花が居た。」
葵くんは優しい眼差しでわたしを見つめると、椅子に座るわたしを抱き締めた。
「、、、え?葵くん?」
「ありがとう。俺を待っててくれて。」
そう言って、葵くんはわたしから離れると、「俺は一花のミスだとは思ってない。だから明日、きちんと行方不明になった資料を探すから。」と言った。
それから葵くんは、車でわたしを自宅まで送ってくれた。
「ありがとう。」
「ううん、こちらこそありがとう。」
「それじゃあ、お疲れ様。おやすみ。」
「お疲れ様、おやすみ。」
そう言って、去って行く葵くんの白い車を見送り、わたしは自宅へと入って行った。



