きみの笑顔が咲く日まで


そして、その話はいつの間にか他の部署にも広がっていて、偶然廊下で葵くんに会った時に「一花、消えたデータの復元させたんだって?すげーじゃん!みんな"さすが社長が引き抜いてきた人だ"って言ってるよ。」と言われた。

「偶然、元々働いてた会社の件だったから出来ただけで、全然だよ。」
「本当に一花は謙虚だよなぁ。」

そう話していると、「そんなの大したことないよ。」と話に入ってきたのは営業部の佐島さんだった。

佐島さんは葵くんの腕に絡みつくと、「そんなことくらいで、調子に乗らないでね?」とわたしに向けて、敵意むき出しな雰囲気を醸し出しながら言った。

「ちょっと、佐島さん。離れてください。」

そう言って、腕を絡めた佐島さんから離れる葵くん。

もうこの時点でわたしは確信した。

佐島さんは、葵くんのことが好きなんだ。

だから、昔からの知り合いであるわたしのことが邪魔で仕方ないんだ。

「それに、楠木さんは調子になんて乗ってません。僕が一方的に褒めていただけです。」
「でも、まだ入社して一ヵ月も経ってないじゃないですかぁ。そんな大した仕事も出来ないのに、そんなことくらいで褒めてたら、調子に乗るだけですよ?」
「佐島さん、感じ悪いですよ。それくらいでやめてください。」

葵くんは佐島さんに向けて冷静にそう言うと、「一花、ごめんね。」とわたしに申し訳なさそうに言った。

するとその途端、佐島さんの表情が一変し「一花?」とわたしを下の名前で呼び捨てしたことに目を釣り上げて呟いていた。

わたしはこれ以上、葵くんと一緒に居ない方が良いと判断し「それじゃあ、事務所に戻るね。」と葵くんに告げた。

「うん、頑張ってね。」

そう言って、わたしに向けて手を振る葵くん。

その横には、鬼の形相でわたしを睨み付ける佐島さんの姿があった。