よく考えれば、葵くんがここで働いていて当然なんだよね。
だって、本来であれば後継者になるはずだった長男の新が亡くなってしまったんだから、必然と次に候補にあがってくるのは次男である葵くん。
葵くんは切なげな微笑みを浮かべ、わたしを見ていた。
その表情が新そっくりで、、、
兄弟なんだから、似てるのは当たり前なのは分かっているけれど、どうしても葵くんを新と重ねて見てしまう自分がいた。
「ずっと心配してたよ。でも、また会えて良かった。」
葵くんがそう言うと、杉浦主任は「そうか。楠木さんは社長のお知り合いだから、渡利も楠木さんのことは知っているのか。」と言った。
「はい、俺が小さい頃から。」
「商品部は、営業さんと関わる機会も多々あるから、何かあれば渡利に訊くといいよ。一番話し掛けやすいだろ?」
杉浦主任がわたしにそう言い、わたしは「はい。」と返事をしたが、何だか複雑な気持ちだった。
それから営業部の事務所をあとにすると、杉浦主任は「あ、そういえば、」と呟き、案内し忘れていた秘書課と社長室の場所を教えてくれた。
そして商品部の事務所に戻ろうとした時だった。
ガチャッ
ドアが開く音がして振り向くと、社長室のドアが開いていて、そこからおじさんが姿を現した。
「あ、社長。お疲れ様です。」
そう言い、杉浦主任がおじさんに向かい一礼する。
おじさんが杉浦主任に「お疲れ様。社内の案内は済んだのかい?」と言うと、杉浦主任は「はい、一通りは案内しました。」と答えた。
「そうか、ありがとう。じゃあ、葵には会ったかな?」
おじさんは、わたしの方を向くとそう言った。
わたしはおじさんの目を見られず、「はい。」と返事をし、少しだけ頑張って微笑んで見えるように口角を上げた。
すると、おじさんはわたしの反応に何かを悟ったのか、優しい口調で「そうか。」と言うと、「杉浦くん、先に戻っててくれないか?わたしは、楠木さんに少し用がある。」と言った。
「分かりました。では、失礼致します。」
杉浦主任はそう言うと、先に商品部の事務所へと戻って行った。



