きみの笑顔が咲く日まで


そしてわたしは、"商品部 楠木"と印字された社員証兼名札を首から下げると、杉浦主任にわたしが使うことになるデスクへと案内された。

「楠木さんは、このデスクを使って。」

そう案内されたのは、事務所内のデスクが並ぶ丁度真ん中の列の窓側から二番目のデスクだった。

「荷物は壁際に並んでいるロッカーに入れてください。どこかに楠木さんの名前が入った専用のロッカーがあるはずなので。」
「はい、わかりました。」
「それでは、支度が済んだら声を掛けてください。まず、社内の案内から始めます。」
「はい。」

それからわたしはズラーッと並ぶロッカーの中から、自分の名前が書かれたロッカーを探し、スマホだけを取り出してバッグをしまうと、トレンチコートをハンガーに掛け、ロッカーを閉めて鍵をかけた。

ロッカーの鍵は無くしてしまわないよう、わたしは首から下げている名札と共にストラップに引っ掛け、待たせてしまっている杉浦主任の元へ急ぐと「準備が整いました。」と声を掛けた。

「じゃあ、行こうか。」
「はい。」

そしてわたしは、杉浦主任のあとに続き、社内を案内してもらった。

「楠木さん、渡利社長のお知り合いらしいね。」

杉浦主任からの質問に驚きながらも、わたしは「はい、かなり昔にお世話になったことがありまして。」と答えた。

「あの渡利社長が取引先から誰かを引き抜くだなんて初めてで、みんな驚いていたよ。どんな優秀な人が来るんだろうってね。」
「いえいえ!わたしなんて全然優秀なんかじゃないです!何の取り柄もない、ただの事務員でした。」

わたしがそう言うと、杉浦主任は微かに微笑み「君は謙虚だね。でも、渡利社長は見る目がある御方だ。君は本当に優秀なんだろう。俺はあまり気が利かないタイプだから、気付いてやれないことがあるかもしれないが、遠慮せずに分からないことがあれば聞いてくれ。」と言った。

杉浦主任、クールであまり話さないタイプかと思ったけど、優しい人だ。

わたしが「はい、ありがとうございます。頑張ります!」と言うと、杉浦主任はクスッと笑い「頼もしいね。ただ頑張り過ぎないように気を付けて。」と言い、まずは総務課から案内してくれた。