きみの笑顔が咲く日まで


「そのネックレス、、、まだつけてくれているんだね。」

おじさんは嬉しそうにそう言った。

わたしはネックレスに指先で触れると「一日も外したことはありません。」と言った。

「あれは、、、高3の時だったかな。夏休み中だけ、バイトをしたいと言い出してね。何でか理由を訊いたら、一花ちゃんにプレゼントを買いたいからと言っていたよ。新は、本当に一花ちゃんのことを大切に思っていた。」

おじさんはその時の事を思い出すかのように宙を見上げた。

「わたしも、新のことを本当に大切に思っていました。」
「新は、自分がしっかり稼げるようになったら、一花ちゃんにプロポーズするつもりだったみたいだからね。それで、一花ちゃん。こんなことを訊くのもどうかと思うんだが、あれから、、、恋愛は、、、他の人と恋愛は出来ているのかい?」

おじさんの言葉にわたしは首を横に振ると「いえ、、、出来ていません。」と答えた。

「、、、そうかぁ。」
「わたしは、今でも新のことが好きです。もう触れることが出来ないのは分かっているんですが、、、心が、他の誰でもない、新のことしか愛せなくなってしまっているんです。」

わたしがそう言うと、おじさんは「んー、、、」と唸り、視線を落とした。

「そこまで新のことを愛してくれていたなんて、親のわたしとしては嬉しいよ。でもね、一花ちゃん、、、そのままでは、一花ちゃんが幸せになれない。新は、一花ちゃんが幸せになることを、一番に願っていると思うよ?」
「でも、、、」
「一花ちゃんの気持ちも分からなくもない。でも、自分のせいで悲しい愛のない人生を送らせてしまっていると新は思っているんだと思う。だから"一花を助けてくれ"とわたしに伝えに来るんだと、わたしは思う。」

おじさんはそう言って、わたしの方を向くと「だから、わたしに一花ちゃんが幸せになる手伝いをさせて欲しい。新の頼みでもあるが、わたし自身も、大切な娘の幸せを願ってる。」と言い、そして「うちの会社で、働いてみないかい?お母さんへの仕送りを増やせるように、給料も一花ちゃんの希望通りにするよ。」と言ってくださった。

わたしは迷った。
おじさんの会社に行くべきなのか、やめるべきなのか、、、

しかし、わたしは思った。

新に心配をかけたくない。
今までわたしを本当の家族のように想ってくれていた渡利家のみんなに恩返しがしたい。

だから、わたしはこう答えた。

「給料は、皆さんと同じで構いません。渡利社長、不束者ですがよろしくお願いします。」

おじさんはわたしの返事に表情を綻ばせると、「ありがとう。こちらこそ、よろしく頼むよ。楠木一花さん。」とわたしに向けて手を伸ばし、わたしはおじさんと握手を交わしたのだった。