アラ還の、恋は野を越え山越え谷越えて

~由佳 said ~

どうしたんだろ。
今までは『結婚はしたくない』と言っていたのに。
それに、一緒に住むのは嫌みたいだし。
よくわからない。
他に好きな人ができて、家には来てほしくない?
ならなぜ結婚?
その人とは結婚出来ないから?
考えても答えはでてこない。

この部屋に夜中までいたけど郁さんに見つかって、しぶしぶ隣の実家に帰って行った。
朝の6時の検温。
「あぁ、もう大丈夫ですね」
熱も嘔吐もなく、早々に退院できそうな予感。
ただ、看護師達が冷たい。
匠さんがいる時とは大違い。
始めは『匠さんのこと、好きなのかな』なんて思ってた。
でも、それにしても一人や二人じゃない。男の人まで、みんなから睨まれてるような気がする。

昨日の夕飯は食べそびれたから、お腹がすいていた。
楽しみにしていた朝食。
ただ、朝食を運んできた人も黙ってガシャンって置いていった。
私がなにかやらかした?

朝ごはんを食べてたら今日はおやすみの匠さんがやってきた。
「冷蔵庫に食べ物や飲み物、買ってきてあるから」
昨日の話はしないのか、「何か飲む?」
いつもの匠さんだ。
なんて聞いたら良いんだろう。
『やっぱり、私のことの『好き』は恋愛感情の好きではない?』
『誰か本当に好きな人ができた?』
『やっぱり結婚相手は必要?』
わからない。

勢いよくドアが開いた。
「匠先生、やっぱり来てた」
ニヤニヤしながら郁さんが診察にやってきた。
「診察のあと、ちょっと来て」

ニヤニヤしてたけど診察の間は真面目なお医者様の顔に。
そして二人で部屋をでる時、私には笑いかけてくださったけど匠さんに対して少し怖い顔をした。
やっぱり担当ではない医者が患者の部屋にずっといるのはよくないんだ。気を付けないとみんなに迷惑をかけてしまう。