アラ還の、恋は野を越え山越え谷越えて

~紗依 said ~

克くんが仕事終わりに駆けつけて来てくれた。
「お義母さん、大丈夫だった?」
私がよほど慌ててたんだろう。
定時後だったから良かったけれど、メッセージではなく電話を掛けてしまった。

「うん、もう大丈夫。仕事中に電話してごめん」
今日はお母さんとご飯に行くと言ってたから、克くんは残業をしていた。
そこに私が『お母さんが事故で救急車乗って、今匠さんとこ』って、電話を掛けたんだ。

「じゃ、車玄関のところに回してくるから荷物持っておいで」

週末は克くんが我が家にやってくる。
そしてもうすぐ3人家族になる。
すれ違いに大きな袋を持って匠さんがやってきた。

「向こうで克と会ったから…、送らなくて大丈夫そうだな」
頭をポンポンして、「心配しないで。俺、今日泊まるから」

匠さんはお父さんじゃないけど、娘のように接してくれる。

このやり取りをナースステーションで、看護師達に聞かれていた。

…陰であんな話をされているとは思ってもみなかった。